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これはすべて過去の物語 これら全ては終わりを迎え 彼の者の願いは叶えられ とうに終焉を迎えた喜劇の舞台裏 すべてを知る魔女の記憶の物語 長い長い夢を見ていた気がする。 どんな夢だったかは覚えていないが、長い長い夢だった気がする。 寝過ぎるほどに寝た気分だ。 そのぐらい、頭が重く、意識がはっきりしなかった。 重い瞼を無理やりこじ開け、まだ眠りたいと抗議する体をどうにか起こす。頭が割れるように痛み、思わず頭に手を置いた。 なんだ?昨日の夜、深酒でもしただろうか? いや、飲んだ覚えはない。 そうだ、ここ数十年酒など飲んでいないじゃないか。 昔は嫌な気持ちを払しょくするためよく飲んでいた。 だが、あの頃から酒を断っていた。 最初は、子供の部屋に転がり込んだことで酒が手に入らなかったからだった。飲みたいが、家にあるのは料理酒だけ。出歩いて買ってくる事は出来たが、それをしなかった。できなかった。 その子供はとても危ない橋を渡り続けており、とても酔ってなどいられる状況ではなかったのだ。 気を緩めば、見落とせば、死んでしまうかもしれない。 それでは目的が果たせない。 酒など飲んでいる時ではない。 どうせ数年の事だ、願いがかなうその日まで禁酒としゃれこもう。 最初はその程度の気持ちだった。 だが、そんな事を考えていたのはほんの短い間だった。 その子供はあっという間に死んでしまい、私は一人取り残された。 一瞬ともいえる短い人生を生き、あっという間に消えてしまったその命は、儚くも苛烈で見目鮮やかな火花を散らし、あっという間に燃え尽き地に落ちる、線香花火のような奴だった。 子供の世話から解放され、酒はもういくらでも飲めるというのに。何も考えず、時間の流れすら忘れて泥酔しても何も問題はないというのに、私はあの時から一切飲んでいない。 喪失には慣れていたはずだった。 慣れていたはずなのに、あいつの旅立ちを見送った喪失感が、今もこの胸に大きな傷跡を残していた。ああ、わかっているさ。Cの世界の住人と会話することなど簡単だ。だがそれは生きていた頃の記憶の寄せ集め。情報を吐き出すだけのAIとの会話と何が違う。虚しさと悲しさが増すだけだ。人並みの感情を取り戻せたことは嬉しいが、やはり人の心を持ったまま、たった一人で永遠を生きるのは辛すぎる。 人として生きるには、人として扱ってくれる者が必要なのだ。 共にこの永遠を歩んでくれるものが必要なのだ。 ……。 やはり私は酔ってはいない。 麻薬や幻覚剤の類でもなさそうだ。 さてはて、ではこの状況は一体何なんだろうな。 別に見覚えの無い場所で目を覚ました…というわけではない。 ちゃんとこの場所を知っている。 知って入るが、既に存在しない場所だ。 僅かに鼻を突くカビと湿気の匂いは、この部屋が古い遺跡の中にあることを示している。機械を使い古く淀んだ空気を外に排出しても、長い年月をかけて遺跡にしみこんだ臭いまでは消しきれない。 ああ、嫌な匂いだ。 ああ、嫌な夢だ。 あの頃の再現などいらないというのに。 この夢が進めば、あの日まで再現されるかもしれないじゃないか。 ゆっくりと体を起こしてみるが残念ながら目を覚ます気配はない。…しかし夢にしてはどこか妙だなと眉を寄せた時、扉がノックされた。 「誰だ?」 警戒しながら尋ねると、聞き慣れた声が返ってきた。 あの日この手で命を奪った者の声だった。 あの日あの場から逃げるため、あの通路にいた者の一人。 扉の前から遠ざかる足音を聞きながら、どういう事だと眉を寄せた。 「マリアンヌが私を呼んでいるだと…?」 マリアンヌは既に亡くなっている。 いや、それを言うならこの場所も、先ほどの声の主だってもうこの世には存在しないはずだ。存在しているはずがないのだ。…だが…いまは、存在している。 そうだ、この場所が存在していた頃は、まだマリアンヌは生きていた。 …これは夢ではないのか? 夢ではないなら・・・なんなんだ? 「神よ、お前は私に何をした…?」 ギアス響団響主の部屋で、C.C.はポツリとつぶやいた。 |